死にたがりの女
TYAA
^3/28-00:01
ああもう嫌だ。
周りの女の子みたいにお洒落しても不細工でスタイルもよくない私には到底似合わないだろうし、そもそも恋愛とかいう誰もがする概念を口にすると馬鹿にされそうで怖い。
男からも女からも
「でしゃばんなクズが」
って蔑まれるんだ。ああ、きっとそうだ。
そんなこんな考えてたら、
「…生まれ変わったら普通の女の子になれるかな。」
気がつけば高層ビルの屋上に立っていた。
IDAaebIczVYJw
N02A
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□@カキコミをする
[4]名無し
^4/1-02:33
痛みはない
落下中の加速で自重の何倍にも膨れ上がった衝撃が頸椎を破壊
神経の伝達速度をはるかに超えるスピードで
完膚なきまでに私の命を破壊される
アスファルトに骨が叩きつけられる嫌な音と
地面が迫ってくる感覚だけがいつまでも頭に残っていた
あぁ、死ぬってのはこんなものか
くだらない
IDjDAFP9hC3jY
au
[5]名無し
^4/1-02:36
考えるのも嫌になって
思考をとめる
…いや、なにかおかしい
死んでいるなら脳も活動を止めるはずだ
なぜ私はまだ考えられるんだ?
…ーっ
なんだ、音?
そんな馬鹿な私は…
死んでいないのか?
IDjDAFP9hC3jY
au
[6]名無し
^4/1-02:42
「…な、んで」
目を開ける
ひたすら眩しい、世界は真っ白で光が眼球に突き刺さるようだ
独り言のようにつぶやいてみた言葉が、思ったよりもかすれて聴こえない
あぁ、耳も喉も失ったのか
…結局、死ねなかった
少しずつ慣れてきた目で周りを見渡すと、ここはどうやら病院のようだ
私はたくさんのチューブと機械に繋がれて、まるで映画の中の人だった
IDjDAFP9hC3jY
au
[7]名無し
^4/1-02:48
ガラッ
ドアが開く
白衣に身を包んだ老人と、これまた白衣に身を包んだ美人が病室に入ってくる
二人のアンバランスさがなにもない病室の雰囲気をさらに無機質なものにしていくようだ
医師は意識の戻った私を見てにこやかに笑い
運が良かったね、と言った
助けられて良かったと
おせっかいな奴らだ
死にたい私を助ける暇があるなら
生きたい誰かにその労力と資源を費やすべきなのに
…まぁ、医師ってのはそんなものだ
IDjDAFP9hC3jY
au
[8]名無し
^4/1-02:53
しまった
考えていることが口に出ていたらしい
「なんで、死にたかったのかな?」
誰にも必要とされなくて、毎日がただ辛いだけなら
生きていることが死ぬより辛ければ
誰だって死にたくなる。
私は、そういう大勢の中の一人だった
愛されない愛せない 笑えない微笑めない 悲しめない泣けない 怒れない怒鳴れない
感情が希薄なんだ
生まれたときから、そういう教育はうけてこなかった
IDjDAFP9hC3jY
au
[9]名無し
^4/1-02:58
「では、こうしよう私が君を殺そう」
…?なにをいっているんだこいつは
「君の望むようにしてあげると言っている。…もし、次の人生で普通の人になれるチャンスがあるならすがりたいんだろう?」
それは、そうだ
そうじゃなきゃわざわざ痛い思いして死にたがるもんか
「なら、私に任せなさい。君を殺そう。君に新しい人生を約束しよう」
なんだコイツ
このじいさんは…なんなんだ
IDjDAFP9hC3jY
au
[10]名無し
^4/1-03:01
じいさんの口車に乗せられてみよう
どうせ、治ったらまた死のうとするんだ
なにがあったって対して意味は持たないだろう
そして
リハビリを続けながら
半年が過ぎた
IDjDAFP9hC3jY
au
[11]名無し
^4/1-03:05
ずっと包帯でグルグル巻きだった顔
病院にはなぜか鏡がなく
この半年間一度も自分の顔を見たことはなかった
「か、かわいい…」
いや本当に可愛い
誰だ、この娘は!わたしか!
完全に別人じゃないか
「すごいな…」
傷一つない、素晴らしい美少女だ
自分でいうのもなんだが
モデルだっていけるだろう
じいさんが言ってたのはこういうことか
IDjDAFP9hC3jY
au
[12]名無し
^4/1-03:10
私を殺す
死にたがりの私を変えて新しい私に生まれ変わらせる
たしかに、容姿は美しくなった
だけど中身は私だ
誰かに愛されたくて愛されなくて
生きる意味を見失った私だ
そんな簡単に人は、これまで生きてきた日々を否定することは出来ないんだ
IDjDAFP9hC3jY
au
[13]名無し
^4/1-03:13
「違います、あなたは完全に新しい人間です」
「元・自殺をはかった女の子、ではありません」
「完全に別人です、なぜなら半年前の今日、その女の子は死んだからです」
「あなたは、あなたです。今日生まれた、だからあなたの生きてきた日々とやらはこれから積み上げられる日々のことを言うのです」
私は…
IDjDAFP9hC3jY
au
[14]死にたがりの女
^4/1-17:34
言ってることは理解したつもりだった
しかしじいさんは続けた
話はこうだ
あの日私は自殺を図りはしたが運ばれ助かったしまった
ではなく術中に自殺を成し遂げていた
時を同じくして院内の脳死の患者が息を引き取った
偶然にも私と容姿や体型は全く違うものの背丈や年頃が似ていた女であったと言う
なんとなくこの先の展開が読めた気がした
IDNaOa4zjwYvY
812SH
[15]名無し
^4/1-18:18
どうやら死んだ女は財閥の一人娘らしい
親族が娘の死を受け入れず
医師に多額な報酬を押し付け私の脳だけを娘に移植させたのだ
正直驚いた
なるほどと納得している自分自身に
同時に次々疑問が沸く
なぜ気付かなかったのだろう身体の変化に
なぜ神憑りなことが出来てしまったのだろう
だってありえないじゃん
沢山の疑問が浮かんでは消えて行く
私は私ではなが私のまま生きている?
混乱?整理?してる暇なくまだ話が続く
「貴方は今日から金持ちの一人娘、お嬢様として生きていかなければならないんだよ」
IDNaOa4zjwYvY
812SH
[16]名無し
^4/7-18:45
お嬢様
最初は聞いただけでムシズが走った
礼儀作法を骨の髄まで叩き込まれ、ありとあらゆる教育を施され、完全な自由も与えられない生活
出たくもない社交パーティーに駆り出され、親の決めた相手と結婚
心の休まる暇がない
それなら以前と変わらないじゃないかと思った
・・・・・・でも、コレはある意味チャンスだ
容姿、財産、権力
この三つを手に入れられるのならば、私を蔑んできた奴らに仕返しができるかもしれない
そう考えると、新しい人生も悪くないと思えた
ID5dshaVJR9y2
F02B
[17]名無し
^4/9-01:58
そんなある日の朝
「おはようございます」と養父に挨拶
うやうやしく、それでいて他人行儀にならないように
鏡にうつる自分の顔は、美しいのに生気がなく、やはりわたしはあの日死んだんだなと苦笑した
家をでて
学校直通の送迎バスに乗る
まぁ、リムジンで登下校なんて有り得ないとは思っていたが
お嬢様が通う学校も、ずいぶん庶民的だなと感じた
外の景色はいつもと変わらず
新しい体という非日常を
日常に塗りつぶしていく
IDjDAFP9hC3jY
au
[18]名無し
^4/10-01:18
「おはよう琴葉!」
校門に降り立つと、背後で声がした
同じ学校の生徒だろうと思ってそのまま歩きだそうとすると、肩をたたかれた
「あれ?どうしたの?」
振り返るとそこには一人、同じ制服の少女がきょとんとした顔で私を見つめている
そうだ、すっかり忘れていた。新しい私の名前
「ああ、ごめんなさい。なんでもないわ。少し考え事をしていて・・・・・・」
慌てた口調でごまかす
新しい名前はまだ呼ばれ慣れていなかった
ID5dshaVJR9y2
F02B
[19]名無し
^4/11-11:59
かつての私の名前は
“清子(しょうこ)”
親が適当につけた名前だ。たしか売れない演歌歌手からとか。
勿論、私はこの名前が大嫌いだった。
小学校にあがった頃、周りは変わった名前ばっかりだった。
“心愛(ここあ)”とか“麗蘭(うらん)”とか。
平凡な名前だった私はよくダサいダサいと苛められた。
小五、小六に至っては漢字が似てるから“精子”ってあだ名をつけられ中学でも言われ続けた(下ネタ好きのクソガキどもめ!)
…ああ、思い出したらまた死にたくなってきた。
IDAaebIczVYJw
N02A
[20]名無し
^4/13-00:03
「ちょっと〜、しばらく会わないと私の事忘れちゃうわけ??
ひどいっ!涙が止まらないよ(笑)。
それよりっ!
退院おめでとうございます!」
IDNaOa4zjwYvY
812SH
[21]名無し
^4/22-03:37
同級生のことはよくわからない
あれから少しの時間はあったが
基本的に前の私の根暗根性が染み付いているので、そう簡単に馴れ合いは出来ない。
しかし人というのは本当に見た目で人生が決まるものだな
なにも言わなくてもルックスが良ければ向こうから仲良くなりたいとやってくる。
男なんて特にそうだ
ヤりたい盛りの年頃だというのもあるが
ことあるごとに言い寄ってくる
私の中身なんか見ていない癖に
IDjDAFP9hC3jY
au
[22]TYAA
^6/26-17:43
しかし、どう卑屈に考えても今の私であるこのお嬢様に人望があったことは否定できない。
前の私の周りの女といえば派手に化粧をしてはしたない格好を可愛いと思い込んでる半ヤンキーみたいなヤツらばっかだったし、
男も男で比較的地味な容姿の私をよく標的にして遊んでいた(清子ウイルスがうつったとか、アイツに告ったヤツには一万円贈呈とかエトセトラ)
IDAaebIczVYJw
N02A
[23]TYAA
^6/26-17:49
…ああ、また嫌なこと思い出した畜生!!!
容姿が変われば性格も変わるとどこかで過信していたが、やはり私は私だった。
卑屈、根暗、ネガティブ思考、性格ブス。
いや多分この身体の持ち主が始めから私であればまだしも、こうまで差があると逆に変な申し訳なさがこみあげてきた。
そう、私は罪悪感でいっぱいになっていたのだ。
あまりにも違いすぎるこの身体の元の持ち主への。
IDAaebIczVYJw
N02A
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