泣ける話
憎めない兄

投稿者: カシス
^ 2010/09/01 11:39


私には四つ上の兄がいます。

兄は勉強はそこまでできないけど、
人柄が良くて、顔も良くて、皆の憧れ。そんな奴。

友達は私の兄を見るなり、

「羨ましいなー」

「私もアンタの兄みたいな人が兄ならよかったよ」

と言う。ここまでならいい。
ここまでなら、私も兄の事を自慢の兄で済ませたハズだ。

だけど、兄目当ての友達が増えて、
そんな事言ってられなくなった。

ある時は、ラブレターの渡しをさせられた。
兄に渡しといて、な物は日常茶飯事。
でも、兄は鈍感だから、気づかない。
そんなんで、兄の事を諦めた友達に

「ラブレターを取り返して来てー」

って言われた時は泣くかと思った。
全部兄の制だと思ったよ。
その子悪い子じゃないんだよ。
兄のいない所では普通の子なんだよ。
兄さえいなきゃ、私だって普通の女の子でいれたんだ。

何処に行ったって私の前には兄の影がチラつく。
親ならぬ、兄の七光りって奴。

最終的には、友達が私に内緒で兄と遊びに行こうとしてた。
兄に

「明日、お前も行くんだろー?楽しみだな?」

とか笑顔で言われて気づくとかどんだけ惨めなの?
兄もいい加減、20越してるくせに、妹の友達と遊ぶとか止めてよ。
もうちょっと人の気持ち考えて!
これ以上、私を惨めにさせないで!
友達といる時に兄と会ってしまう度、
引きつった笑いしかできなかったよ。

ある日、そんな私の気持ちが爆発した。
クラスで友達に直接兄の事は言えなかったけど、暴言をいっぱい言った。
周りなんて見えなかった。
この後のことなんて考えなかった。
ただ、この気持ちをぶつけずにはいられなかった。

でも、言った後、すごく後悔して、自己嫌悪。
誰も私に話しかける事なんてしなかった。
否、できなかったんだと思う。
家に帰ってからも明日からどうしようって事が頭周って、
混乱するばかり・・・。
でも、そんな時、兄が私に話し掛けたんだよ。

憎い程爽やかな笑顔でさ、

「よぉ、元気かー?」

だって。
アンタ馬鹿じゃないの

こんなにイライラしてるオーラだしてんのに、
どんだけ空気読めてないの?
親だって、さすがに空気読んでるよ。
そんな兄の鈍感さがムカついた。

「うるさいな。ほっといてよ」

さっさとどこかに行け。とばかりに舌打ち。
すると、兄はまた憎たらしい程爽やかに笑った。

「アハハハ、女の子が舌打ちしちゃダメだぞ。
まぁ・・・頑張れ」

そう言うと兄はどっかに行った。

気づいたら私は泣いてた。


訳もわからず、泣いてた。


わかってた。兄の制じゃない事くらい。
兄は悪くなんてないって。
だけど、兄にあたらずにはいられなくて、
友達のいない所では酷い態度を取ってばかりだった。

なのに、兄は私を一度も責めもせずに、

「頑張れ」なんて言うんだ。


もしかしたら、兄は全てわかっていたのだろうか?


私には勇気がなくて聞けなかったけど、
私は兄に一言謝ろうと思った。

きっと兄はまたあの憎たらしくも爽やかな笑みで、


「何かわかんないけど、許す!」


なんて言うんだろう。



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